2023/8/6 - 8/12
東恩納裕一「Untitled(FL30・21)」
Yuichi Higashionna
Spray paint on canvas / 91×72 / 2007
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17世紀オランダで流行した、人生の虚しさやはかなさを表す静物画《ヴァニタス》をモチーフとした東恩納裕一によるFL.シリーズの内の一作。
切り絵のようでもあり、揺れながら残像のように滲むこの画面は、造花やリボン、鎖といった無機物をキャンバスに押し付け、ラッカースプレーで上から吹き付けることにより作られている。何かの代替品や一過性のそれ自体でなくても成り立つ物を用いながらそれの痕跡を残す。ステンシル技法におけるフォトグラムのように反転されたこの作品からは確かに虚しさも感じさせる。しかしシンメトリーに華やかに画面が構成され、まるで無機物が着飾り歌い踊るような様は、形として閉じ込められた辞書の中の言葉のように、冷ややかで理知的に、それ以上の意味を持ち得ぬように鑑賞者と距離を取りながらも、賛歌のように訴えてもくるようだ。