2022/3/24 - 3/30
増田将大「Moment's #66」
Masahiro Masuda
silkscreen(acrylic) on canvas / 150×90 / 2021
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日常にある一風景を撮影、その画像をプロジェクターで重ねるようにして同じ場所に投影した風景を再度撮影。この手順を数回繰り返した後、アクリルを使いシルクスクリーンにてキャンバスに刷ることでこの作品は作られている。
日常の何気ない風景のはずなのに、この画面から感じる背筋がゾッとするような不安感は何だろうか。シルクスクリーンにより一色ずつキャンバスに刷り出したニュアンスの違う画一的なグレーの色味、何度も同じ風景を重ねたことによる画面のノイズ。これらは我々に馴染み深い風景だからこそ、不気味の谷現象(ロボットなどの人工物が人間の姿に寄せて作られた際、人間の姿に相当近づいた段階で急に違和感や嫌悪感を感じ始める現象)のように僅かな違和感として残り、目には見えない何かがあるような不気味さを残す。
また一方でこの作品は、他人の過去の記憶を見ているかのような感触を我々に残している。この画面のブレは、映画の回想シーンで用いられる、カメラのシャッター速度を遅くし被写体ボケをあえて作り出すことで以前のシーンと時間軸が異なることを鑑賞者に意識させる技法のようでもあり、ツギハギだらけのあやふやな人の記憶を形にして再現しているかのようでもある。